認知症ケアとして回想法を行う時のポイント

薬を使わない認知症ケアのひとつに、回想法があります。アメリカで誕生した回想法は、自分の過去を思い出しながら話すことで精神の安定と認知機能の改善が期待できます。回想法を効果的に行うには、いくつかのポイントを押さえることが大切です。

回想法を行う際に重要なのは、相手のプライバシーを守ることです。回想法のなかで語られる思い出は、ポジティブなものもネガティブなものもすべて本人のプライバシーに関わります。それらが他人に伝わることのないよう、回想法を実践する際には最大限プライバシーの保護に努める必要があります。

回想法では、傾聴の姿勢も重要です。傾聴とは相手の話に丁寧に耳を傾け、相手に共感や理解を示すコミュニケーション手法です。回想法を行っていると、時には事実と異なる話や以前話していた内容と食い違う話が出てくることがあります。このような場合に相手の話を否定したり、間違いを訂正したりすることは好ましくありません。なぜなら回想法は、思い出を正しく語ることが目的ではないからです。相手の話を聞くことを基本とする回想法では、相手の話を否定せず傾聴する姿勢が必要なのです。

回想法では、無理やり相手の話を引き出すことは避けましょう。思い出を語るのが回想法とはいえ、本人が話したくないことを無理やり聞き出そうとするのは、相手に多大な精神的負担を与えてしまいます。思い出を語っている途中、言葉に詰まったり明らかに表情が暗くなったりする場合には、それ以上深入りせずに別の話題に切り替えるようにします。回想法のポイントを知っておくと、介護の仕事における認知症ケアで大いに役立つでしょう。